残業の多さに悩む現役保育士が、残業が生まれる構造を知って働きやすい園を判断できるように解説します
保育士の残業は、本人の要領ではなく園の運営体制で決まります。
理由は、残業の発生源が書類業務・行事準備・人員配置という園側の設計にあるからです。
同じ経験年数の保育士でも、園が変われば残業時間は大きく変わります。
厚生労働省の報告書でも「労働時間が長い」は保育士の退職理由の上位に挙げられています。
だから残業に悩む現役保育士がまず見るべきは、自分の働き方ではなく園の仕組みです。
最終退勤の鍵を閉めるとき、外はもう真っ暗。
「この残業、どこの園でも当たり前なの?」「私の要領が悪いだけ?」「転職しても同じだったら?」
帰り道、スマホの検索窓に同じ言葉を打ち込んでは、画面を閉じる。
この記事では、残業が生まれる3つの構造と、残業の少ない園を見分ける5つの判断基準を整理します。
読み終える頃には、今の園と他の園を同じ物差しで比較できるようになっているはずです。
【この記事のポイント】
- 保育士の残業は個人の努力不足ではなく、園の運営体制で決まる
- 残業の三大発生源は「書類業務」「行事準備」「人員配置」の3つ
- 見学と面接で確認できる5つの判断基準で、残業の少ない園は見分けられる
この記事の結論
- 一言で言うと、残業は園運営で変わる。
- 最も重要なのは、残業を「自分のせい」ではなく「仕組みの問題」として捉え直すこと。
- 失敗しないためには、1園で即決せず、複数園を同じ判断基準で比較すること。
- 残業の少ない園は実在する。ただし求人票の言葉だけでは見抜けない。
残業に悩む現役保育士が最初に知りたい、残業が生まれる3つの構造
まず伝えたいのは、残業をつらいと感じるのは甘えではない、ということです。
厚生労働省の報告書では、保育士の退職理由の上位に「仕事量が多い」「労働時間が長い」が並んでいます。
つまり、あなたと同じ理由で職場を離れた人が大勢いるということ。
そう感じるのは普通の感覚です。
その上で、残業の正体を3つに分解していきます。
構造1:書類業務が勤務時間内に終わらない園の共通点
結論から言えば、残業の最大の発生源は書類業務です。
指導計画、保育日誌、連絡帳、おたより、行事の企画書。
子どもがいる時間帯には書けないものが多く、書く時間が日中に確保されていない園では、自動的に夕方以降へ回ります。
よくあるのが、子どもと離れて事務作業をする時間、いわゆるノンコンタクトタイムが制度として存在しない園です。
この場合、書類は午睡中の細切れ時間か、退勤後にまとめて書くしかありません。
手書き文化が強い園も要注意です。
同じ月案でも、手書きとICT入力では作成時間に大きな差が出ます。
逆に言えば、書く時間をシフトに組み込んでいる園では、書類は「業務」として日中に消化されていきます。
構造2:行事準備の負担は「行事の数」より「準備の仕組み」で決まる
行事が多い園は残業も多い、と単純には言えません。
差を分けるのは、準備を誰がどう分担するかという仕組みです。
衣装も装飾もすべて手作りで、担任1人が抱え込む園では、行事前の1〜2週間に残業が集中します。
一方、装飾の使い回しを前提にし、準備を学年やチームで分担する園では、行事の数が同じでも負担は分散します。
ケースによりますが、「昨年より豪華に」が暗黙のルールになっている園は、準備量が毎年増え続ける傾向があります。
見学のときは、行事の写真を見ながら「これは何人で、どのくらいの期間で準備しましたか」と聞いてみてください。
答えが具体的に返ってくるかどうかで、分担の仕組みの有無が分かります。
構造3:人員配置に余裕がない園では、残業が「善意」で埋まっていく
配置基準ぎりぎりの人数で回している園では、誰かの休みや会議のたびに現場が手薄になります。
その穴を埋めるのは、たいてい「先に帰りづらい」という職員の善意です。
こども家庭庁の資料では、保育士の有効求人倍率は令和6年4月時点で2.42倍。
全職種平均の1.18倍と比べて2倍以上の高さで、どの園も採用には苦労しています。
だからこそ、基準より多めの人員を確保できている園は、働きやすさに投資している園だと判断できます。
実は、配置の余裕は人数の表だけでなく、日常の一言にも表れます。
私が愛知県小牧市の園の見学に同行したとき、先輩保育士が若手に「それ明日でいいよ、一緒にやろう」と声をかけて、そろって定時に退勤していく場面を見ました。
制度より先に、その一言が自然に出る職場かどうか。
そこに園運営の姿勢が表れます。
転職で後悔しないために、残業の少ない園を見分ける5つの判断基準
見学と面接でそのまま使える5つの判断基準
次の5つは、どの園の比較にもそのまま使えます。
- 書類を書く時間が勤務時間内に確保されているか
- 書類がICTなどで簡素化されているか、手書き中心か
- 行事準備の分担ルールが決まっているか
- 配置人数に基準以上の余裕があるか
- 「残業はありますか」への答えが、理由や時期まで具体的か
5つのうち3つ以上に明確な答えが返ってくる園は、残業を仕組みで管理している園です。
逆に「みんな頑張ってくれています」のような精神論しか返ってこない場合は、慎重に見た方がいいでしょう。
質問しづらければ、「1日の流れを教えてください」と聞くだけでも構いません。
書類や準備の時間が日中のどこに組み込まれているか、その説明で仕組みは十分に見えてきます。
ちなみに、愛知県小牧市・一宮市・名古屋市で認可保育園8園を運営する幸の華では、「残業ありますか?」という質問に「ほぼありません」と答えています。
もちろん、言葉をうのみにせず、見学で理由まで確かめてほしいと思います。
それでも、比較材料の一つにはなるはずです。
残業に悩んで転職した保育士が、比較中に確認していたポイント
転職相談で実際にあった検討の流れを紹介します。
相談に来た当初、その方は「どうせどの園も残業だらけですよね」と半分あきらめていました。
複数園の比較を始めると、今度は「求人票の『残業月5時間』って本当ですか?」と迷いが深まります。
正直なところ、求人票の数字だけでは判断できません。
その方の迷いが晴れたのは、ある園の見学で職員室のホワイトボードを見たときでした。
書類の締切と担当者が一覧になっていて、業務が個人任せではなく、園として管理されていたからです。
最終決定の前に確認していたのは3点。
退勤時刻の実態、書類を書く時間の有無、行事前の働き方です。
この確認の手順は、どの園を選ぶ場合でもそのまま再現できます。
残業が不安だった人が、最終的に納得できた判断基準
最後まで残ったのは「入ってみないと分からないのでは」という不安でした。
その感覚は正しくて、例外もあります。
どんなに整った園でも、行事の直前や年度末に仕事が膨らむ時期はあるからです。
納得の決め手になったのは、残業がゼロかどうかではなく、「膨らんだときに園がどう動くか」を確認できたことでした。
繁忙期に業務を分担し直す仕組みがあるか、負担が特定の人に偏っていないか。
そこを確かめて園を決めた方は、転職後、退勤の帰りにスーパーへ寄れる日が増えたと話していました。
劇的な変化ではありません。
それでも、夕食の買い物を諦めない毎日は、確かに続いているそうです。
複数園を比較する前提なら、最初の一歩は職場見学が安全です。
幸の華でも、応募前の見学だけのご相談を受け付けています。
応募から職場見学、面接へと進む流れなので、まず話を聞いてから考えることができます。
よくある質問
Q1. 保育士の残業はどこの園でも当たり前ですか?
A1. 当たり前ではありません。
書類・行事・配置の3つの仕組みが整った園と、個人任せの園とでは残業時間に大きな差があります。
「業界だから仕方ない」ではなく、園ごとの構造で判断するのが結論です。
Q2. 残業代が出ないのは普通のことですか?
A2. 働いた分の残業代が支払われないのは労働基準法に反します。
ただし持ち帰りのような見えない残業は記録に残りにくいのが実情です。
面接では残業の有無より「残業をどう管理しているか」を聞くと実態が見えます。
Q3. 残業が少ない園はどうやって探せばいいですか?
A3. 求人票の「残業月◯時間」だけで決めず、見学とセットで判断してください。
本文の5つの判断基準のうち、3つ以上に具体的な答えが返るかが目安です。
2〜3園を同じ基準で比べると差がはっきり分かります。
Q4. 「残業ほぼなし」と書いてある求人は信用できますか?
A4. 言葉だけでは判断できません。
書類時間の確保、行事準備の分担、配置の余裕という裏付けを見学で確認してください。
理由まで説明できる園であれば、信頼度は高いといえます。
Q5. 新人のうちは残業が多くても仕方ないですか?
A5. 仕方なくはありません。
新人ほど書類に時間がかかるからこそ、教える体制と書く時間を用意するのが園の役割です。
新人だけが残る状態が続く園は、仕組みの問題を疑ってください。
Q6. 残業を理由に転職するのは逃げでしょうか?
A6. 逃げではありません。
厚生労働省の報告書でも「労働時間が長い」は保育士の退職理由の上位です。
環境を変えて長く働き続ける選択は、前向きな判断だと考えられます。
Q7. 今の園で残業を減らす方法はありますか?
A7. 書類様式の簡素化や、行事準備の分担見直しを提案する方法があります。
ただし、園の運営方針そのものを個人の力で変えるのは難しいのが現実です。
提案しても変わらない場合は、環境を変える方が早いケースもあります。
まとめ
保育士の残業は、個人の頑張りの問題ではなく、園の運営体制の問題です。
書類業務の時間確保、行事準備の分担、人員配置の余裕。
この3つの構造を知っているだけで、求人票や見学で見るべき場所が変わります。
残業がつらいと感じている自分を、責める必要はありません。
同じあなたでも、仕組みの整った園なら定時で帰れる。
それくらい園による差が大きいのが、保育業界の実情です。
だからこそ、1園の印象で即決せず、複数の園を同じ判断基準で比べてください。
自分で比較して選んだという事実そのものが、転職後の納得感を支えてくれます。
この記事のまとめ:要点3つ
- 残業は個人ではなく園運営で決まる。原因は書類・行事・配置の3構造
- 見学で使える5つの判断基準を満たすかで、残業の少ない園は見分けられる
- 1園即決を避け、複数園を同じ物差しで比較することが後悔しない近道
まずは気になる園を2〜3園リストアップして、職場見学の予約から始めてみてください。
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