給料が低い理由を知りたい保育士が、給与が制度と園運営で決まる仕組みを理解できるように解説します
保育士の給料は、個人の頑張りではなく「公定価格という制度」と「園の運営方針」の2つで決まります。
給料の原資が国の定める公定価格で計算されるため、園の売上を個人の努力で増やす余地はほぼありません。
一方で、処遇改善等加算の取り方や人員配置は園ごとに違い、同じ地域でも手取りと負担のバランスに差が出ます。
だからこそ、見るべきは「業界の平均額」ではなく「園ごとの仕組み」です。
夜、求人サイトの給与欄を眺めては、そっと画面を閉じる。
「この仕事、好きなのにな」「私の給料って安すぎ?」「他の園なら違うのかな」。
そんな迷いを抱える方が、給与の決まり方を根本から理解し、園選びの判断材料にできるように整理します。
【この記事のポイント】
- 保育士の給料の原資は国が定める公定価格で、園が自由に決められる範囲は限られている
- 処遇改善等加算の活用や人員配置など、園運営しだいで手取りと負担のバランスは変わる
- 「相場より高いか」ではなく「制度をどう使い、どう配分している園か」で職場を判断する
この記事の結論
- 一言で言うと、保育士の給与は「制度×園運営」で決まる。
- 最も重要なのは、月給の額面だけでなく残業・持ち帰りを含めた実質で比べること。
- 失敗しないためには、処遇改善の反映方法と昇給実績を園に直接確認すること。
- 給料が低いのはあなたの能力の問題ではなく、仕組みの問題。
「保育士の給料は低い」と言われ続ける制度上の理由
保育の“値段”は国が決めている──公定価格という仕組み
結論から言うと、保育士の給料が上がりにくい最大の理由は、保育園の収入自体が国の定める公定価格で決まっているからです。
認可保育園の運営費は、子どもの人数や年齢、地域区分をもとに計算され、園が保育料を自由に値上げして人件費に回すことはできません。
一般企業なら商品の価格を上げたり売上を伸ばしたりして給与に還元できますが、保育はその構造を持たない公的サービスです。
つまり「保育士の値段」は市場ではなく制度が決めている、と言えます。
ここを知らないまま「うちの園がケチなんだ」と結論づけてしまうのは、正直なところ少しもったいない判断です。
園長がどれだけ人件費を増やしたくても、原資には制度上の限界がある。
その前提に立つと、園ごとの差が「どこで」生まれるのかが見えやすくなります。
需要は高いのに給与が追いつかない──数字で見るギャップ
こども家庭庁の資料では、保育士の有効求人倍率は令和6年4月時点で2.42倍。
全職種平均の1.18倍と比べると、約2倍の求人が保育士に集中している計算です。
本来、人手が足りない仕事は給与が上がるはずですが、公定価格の枠がある保育では市場原理がそのまま働きません。
さらに厚生労働省の調査では、保育士資格を持つ人のうち実際に保育士として働いている人は約半数にとどまります。
「資格はあるのに現場に戻らない」人がこれだけいる背景には、待遇への不満が横たわっています。
実際、厚生労働省の報告書でも、退職理由の上位に「給与が安い」が「職場の人間関係」「仕事量が多い」などと並んで挙げられています。
それでも流れは変わりつつある──処遇改善という追い風
暗い話だけではありません。
政府は処遇改善等加算や公定価格の見直しによって、保育士の賃金改善を継続しています。
出生数は1970年代の約200万人から2023年には約70万人まで減りましたが、女性就業率の上昇で保育需要は減っておらず、保育士確保は国の優先課題であり続けています。
背景には、保育という仕事の評価が歴史的に追いついてこなかった事情もあります。
1947年に児童福祉法で保母資格が制度化され、1999年に「保育士」へ名称変更されて国家資格の専門職になりました。
ノーベル賞経済学者ジェームズ・ヘックマンの研究では、幼児教育への投資効果は人生の中で最も高いとされています。
仕事の価値に制度の評価が追いつく途中段階にある、というのが現在地です。
ケースによりますが、加算をきちんと取得し、それを職員に配分している園では、10年前より待遇は着実に良くなっています。
問題は、この「取得と配分」が園によってバラバラなこと。
ここからが、園選びで差がつく話です。
同じ制度なのに手取りが違う──転職前に見たい園運営の中身
処遇改善加算を「取って、配っている」園かどうか
結論はシンプルで、加算を取得しているか、そしてそれを誰にどう配分しているかで給与は変わります。
加算には研修受講や役職設置などの要件があり、事務負担を理由に十分活用できていない園も存在します。
逆に、制度を学び続けている園は、若手にも中堅にも加算を反映させる設計をしています。
実は、幸の華の面接や職場見学でも「処遇改善って給料にどう反映されるんですか?」という質問が年々増えています。
小牧市の園で採用面談を担当したとき、5年目の保育士さんから「今の園では加算の説明を一度も受けたことがない」と打ち明けられたことがありました。
説明がない園に悪意があるとは限りませんが、説明できる園のほうが配分の透明性は高い。
これは園を比較するときの物差しになります。
額面より「時給換算」──残業と持ち帰りを含めて比べる
月給が1万円高くても、サービス残業と持ち帰り仕事が月に何十時間もあれば、実質の時給は逆転します。
保育士の労働環境研究では、持ち帰り仕事が週5日になるとバーンアウトへの直接的な影響が見られると報告されています。
給与の比較は「額面÷実労働時間」で考えるのが安全です。
よくあるのが、「基本給は普通だけれど残業がほぼない園」と「額面は高いが持ち帰り前提の園」との間で迷うケース。
一宮市の園で働く職員と面談した際、「前の職場より額面は少し下がったけど、持ち帰りがなくなって満足度は上がった」という声を聞きました。
日曜の夜に、翌週の製作準備を居間に広げなくてよくなった、と。
数字に表れない部分こそ、時給換算で見える化しておきたいところです。
求人票と見学で確認したい給与まわりのチェック項目
行動に移すなら、確認すべきは次の3点です。
1つ目は、処遇改善等加算の反映方法(基本給か手当か、対象は誰か)。
2つ目は、昇給の実績(モデル年収ではなく、直近の昇給額)。
3つ目は、残業と持ち帰りの実態(「残業ありますか?」は率直に聞いてよい質問です)。
この3点は、電話やメールで聞きにくければ見学の場で口頭で確認すれば十分です。
愛知県内でも、名古屋市の中心部と小牧市・一宮市とでは家賃や通勤事情が違うため、住宅手当や通勤条件まで含めて手元に残る額で比べると、額面の印象が入れ替わることもあります。
例外もあります。
小規模園などでは役職ポストが少なく、額面の伸びが緩やかな代わりに、配置に余裕があって負担が軽いという構造もあります。
何を優先するかは人それぞれで、正解は1つではありません。
よくある質問
Q1. 保育士の給料はなぜ低いと言われるのですか?
A1. 園の収入が国の公定価格で決まっており、園の努力だけで人件費を大きく増やせない構造だからです。処遇改善等加算で改善は進んでいますが、全職種との比較ではまだ課題が残ります。
Q2. 給料は今後上がる見込みはありますか?
A2. 政府が処遇改善等加算や公定価格の見直しを継続しており、改善の方向にあります。有効求人倍率2.42倍という人材不足も、待遇改善を後押しする圧力として働いています。
Q3. 同じ地域でも園によって給料が違うのはなぜですか?
A3. 加算の取得状況、配分方針、人員配置の3つが園ごとに違うためです。額面で1〜2万円、残業を含めた実質時給ではそれ以上の差が出ることもあります。
Q4. 転職で給料を上げることはできますか?
A4. 可能ですが、額面だけで選ぶと残業や持ち帰りで実質が下がる失敗が起きやすいです。額面・実労働時間・昇給実績の3点セットで比較してください。
Q5. 面接で給料のことを聞いたら印象が悪くなりませんか?
A5. 事実確認として聞く分には問題ありません。むしろ処遇改善の反映方法に即答できるかどうかで、園の透明性を逆に判断できます。
Q6. 小規模保育園は給料が低いというのは本当ですか?
A6. 一概には言えません。規模より加算の活用と配分で決まります。小規模園は配置に余裕があり残業が少ない傾向もあるため、時給換算では有利なケースがあります。
Q7. 資格を持っているのに保育士をしていない人が多いのはなぜですか?
A7. 厚生労働省の調査では資格保持者のうち保育士として働く人は約半数です。給与・仕事量・人間関係が主な理由で、裏を返せば職場選びしだいで続けられる仕事だということです。
Q8. 保育の仕事の価値は今後も評価されていきますか?
A8. 出生数は約200万人から約70万人に減りましたが、女性就業率の上昇で保育需要は減っていません。幼児教育の投資効果の高さを示す研究もあり、処遇改善は続く見込みです。
まとめ
保育士の給料は、公定価格という制度の枠と、園ごとの運営の掛け算で決まります。
「低いのは業界だから仕方ない」で思考を止めると、改善に取り組む園との出会いを逃します。
逆に「高い額面」だけで飛びつくと、実労働時間で損をすることもあります。
数字のギャップは事実として存在します。
ただ、求人倍率2.42倍という売り手市場は、あなたが職場を選べる立場にあるという意味でもあります。
制度を理解した上で、加算の反映・昇給実績・残業の実態を1園ずつ確かめる。
それだけで、給与への納得感は大きく変わります。
複数園を比較する前提で、まずは職場見学から始めるのが安全です。
幸の華(愛知県小牧市・一宮市・名古屋市の認可保育園8園)でも見学だけのご相談を受け付けており、「残業ありますか?」という質問には「ほぼありません」と実態のままお答えしています。
自己応募のお祝い金など、比較材料になる制度もあわせて確認してみてください。
この記事のまとめ:要点3つ
- 保育士の給料の原資は公定価格で決まり、個人の頑張りだけでは変えにくい構造がある
- 処遇改善加算の取得・配分と残業実態によって、同じ地域でも実質の待遇は園ごとに差がつく
- 額面ではなく「時給換算+昇給実績+加算の透明性」で園を比較すると失敗しにくい
気になる園があれば、今週のうちに見学の問い合わせを1件だけ送ってみてください。
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